がん診療の標準化を実現するために、Web会議システムを活用したシステムを構築。
NPO法人がん情報局様は2005年から、乳がんを中心にがん診療に関する適切な情報を提供するために、様々な活動を行っています。2007年8月には、この活動をさらに系統的に発展・充実させるためにNPO法人設立を申請し、内閣府より認可されました。がん診療にあたっては、標準的な治療方法やその日々の運用についての情報共有がきわめて需要です。そのため従来から医療従事者の研修会やカンファレンスが開催されてきました。しかし医師・看護師・薬剤師などの多職種が一緒に参加することは難しく、また地方で行う研修会は開催頻度が少なく地域間格差も生じていました。こうした課題を解決するために、同法人では2008年からインターネットを用いたWeb会議システムを導入。全国の複数の医療機関を結び、多職種が一緒に参加する多地点カンファレンスシステムを構築し、運用を開始しました。
全国の医療従事者が簡単に使えるWeb会議システムを低コストで実現。
同法人の多地点カンファレンスシステムは現在、株式会社ブイキューブのWeb会議システム「V-CUBEミーティング」を中心に、Webカメラ(複数メーカー)、マイクスピーカー(ヤマハPJPシリーズ)で構成されています。その選定にあたり特に重視したのが、システムの専門知識がない医療従事者でもすぐに使える容易な操作性でした。新たなプログラムのインストールや難しい設定が必要ないこと。またWebカメラとマイクスピーカーをパソコンに繋ぎインターネットに接続するだけで、すぐにWeb会議が始められることが必須要件でした。特にマイクスピーカーとして選定されたヤマハのPJPシリーズは「音声がとても安定している」「設定の必要もなくトラブルもない」と、高く評価されています。手頃な費用で、安定して運用できる、多職種による多地点カンファレンスが実現したのです。
がん診療の地域間格差是正と、チーム医療の推進に貢献。
同法人が導入した多地点カンファレンスは現在、月に数回、全国の11カ所の医療機関が参加して開催されています。各拠点では、医師・看護師・薬剤師などがWeb会議システムの回りに集まり、パワーポイントを使った症例報告や学会参加報告を行ったあと、双方向での質疑応答や活発な議論が行われています。同システムの導入により、カンファレンス開催の頻度が一挙に高まり、場所の制約がなくなりました。また、がん患者がおかれた様々な状況をふまえた具体的な症例を紹介しあうことで、がん診療の標準化と地域間格差の是正に大きく貢献しています。さらに各拠点で多職種が一緒に会議に参加し、意志疎通を行うことで、それぞれの立場を超えたチーム医療の推進にも役立っています。同法人では今後、参加医療機関をさらに増やし、がん治療により貢献できるカンファレンスの実現を目指しています。
遠隔地を結ぶカンファレンスシステムは、今後の医療のなかで大きな可能性を秘めています。
NPO法人 がん情報局 理事長/医療法人 圭友会 浜松オンコロジーセンター 院長 渡辺亨様
遠隔地にある医療機関を結ぶカンファレンスシステムの可能性には、以前から気がついていました。しかし当時はシステム関連費用が非常に高額で、導入には至りませんでした。今回の多地点カンファレンスは、安価な費用で効果的なシステムが構築でき、大きな成果をあげています。今後、このシステムに参加する医療機関はどんどん増えることでしょう。がん診療だけではなく、内科や外科など他の専門分野にも普及していくと思います。さらに、場所の制約を超えて、セカンドオピニオンを求める患者やその家族とのコミュニケーションに活用するなど、可能性は大きく広がっていると思います。
違和感のない遠隔会議のなかで、治療の全体像や患者の背景など、多くの気付きがありました。
NPO法人 がん情報局 理事/医療法人 圭友会 浜松オンコロジーセンター がん専門薬剤師 宮本康敬様
多地点カンファレンスに初めて参加したとき、「これはスゴイな」と思いました。使った違和感はまったくなく、ごく自然に会議に参加していました。いろいろな専門の方々と議論することで、それまでは見えなかった治療の全体像や患者の背景が理解でき、多くの気付きがありました。がん診療には、やはり様々な立場の人の知恵を結集する必要があります。このシステムをより多くの医療機関が導入することを望んでいます。
看護師にとって、実際の症例を他の医療機関の方々と共有できるのは、非常に良いことです。
NPO法人 がん情報局 理事/浜松医療センター 乳がん看護認定看護師 副看護長 天野一恵様
看護師が院外の勉強会に参加することはたまにありました。しかし実際の症例を、それも他の医療機関の方々と話し合うことは初めての経験でした。看護の課題や悩みを率直に話し合うことができ、非常に良かったと思います。そして共有された知恵は、翌日の診療にすぐに活かすことができます。患者が置かれた状況を深く理解し、より的確な看護を行うことができるようになりました。システムにはまったく詳しくありませんが、とてもスムースに使っています。
全国11カ所(2013年9月現在)の医療機関には、株式会社ブイキューブのWeb会議システム「V-CUBEミーティング」、Webカメラ(複数メーカー)、マイクスピーカー(ヤマハPJPシリーズ)が導入されています。参加者が多い拠点では、プロジェクターとスクリーンにより、パソコン画面上の参加者やパワーポイントの資料が映し出されます。
参加する各医療機関は、がん情報局が作成した簡単な資料と電話により、簡単にシステム導入を行っています。難しい設定や専門知識は不要で、誰でも容易にWeb会議システムに参加することが可能です。
(2013年10月31日 掲載)
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