愛知県内の市立中学校で理科担当教諭を務めるかたわら、2010年代前半から、教育に関する研究および教育関係職員の研修を行う愛知県総合教育センターの協力研究員を兼務していた岩田 智文 教諭(以下、岩田教諭)。当時、まだ登場したばかりのオンライン会議システムを活用し、大学や教育施設など外部とつないだオンライン授業の研究に着手。その後もマイクロソフトの教育者向けセミナーに参加するなど研鑽を重ね、MCE(マイクロソフト認定教員)認定を皮切りに、MIEE(マイクロソフト認定教育イノベーター)認定を経て、2019年には、国内で9名のみとされるMicrosoft Innovative Educator Fellow(以下、MIE Fellow)のバッジも取得しています。
オンライン授業では、マイク内蔵型のPTZカメラや広角のWebカメラなど、主にビジネスユースの機器を利用していましたが、マイクの集音性能が低いうえに外部接続できるマイクの数も少なく、教室内の隅々まで音声を拾うのは難しい状態でした。また生徒は、発表など発言の際にいちいちマイクの前に移動する必要があり、スムーズな授業進行の妨げになっていました。
班活動が中心となる理科の授業において、終盤で生徒がひとりずつ発表するシーンだけでなく、実習・観察する過程で発生する生徒同士の会話や1人ひとりの何気ないつぶやきなど、生徒たちが真剣に取り組む様子(雰囲気)を相手に伝えたいと考えた岩田教諭。より優れたマイク性能の製品を求め情報収集を継続するなか、電子黒板や書画カメラなどのベンダーから「音声品質で選ぶならヤマハのYVC-1000がダントツ」と勧められ、授業で使ってみたいという想いが膨らみます。最終的に「最大5つまで専用マイクを拡張できる」「マイクは電源不要で接続も簡単」「自動音声調整機能でセッティングも不要」といった点が決め手となり、2022年2月、オンライン授業でのYVC-1000(+YVC-MIC1000EX)利用が決まりました。
2022年2月には、教室内のChromebookにYVC-1000およびWebカメラや書画カメラを接続し、「宇宙や地球のなりたち」をテーマとした蒲郡市生命の海科学館との第1回連携授業を実施しました。標準のマイクに拡張マイクを追加し、計5台のYVC-1000専用マイクを教室内に配置しましたが、デイジーチェーンでつなぐだけでよく、自動音声調整機能によってエコー対応などの設定不要のメリットを体感することに。その後、第2回・第3回と連携授業を重ねるなかで、マイク位置を実験台の中央に変更するなどした結果、科学館の先生から「生徒たちのつぶやきまで漏らさず聞き取れ、適宜アドバイスしてあげることができました。その点では実際に教室にいるよりも聞こえたかも知れません」と評価いただきました。生徒はマイクを意識することなく自然な状態で発言・発表でき、スピーカー性能についても、科学館の先生のクリアな音声が教室の隅々まで届き、追い求めていた理想のオンライン授業に一歩近づくことができました。
理想のオンライン授業を追求してVR教材の制作にもチャレンジ
オンライン授業に取り組みはじめた当初は、相手の映像や資料の画像などビジュアル面の方が大事だと思っていましたが、やっていくうちに、多少映像・画像の質が悪くても、お互いの音声がクリアに聞こえることのほうが重要だと思うようになりました。今回の科学館との連携授業では、音声による情報量が格段に増えたことによって、まるで同一空間で授業をしているような感覚になり、生徒たちの授業への集中力が違ってくると感じました。さらに理想のオンライン授業に向けて、VRやメタバースといった技術にも注目しています。たとえば音声で空間の奥行きを表現できるようになれば、より双方向でやり取りしている印象が強まるのではと夢が広がります。
(2022年04月26日 掲載)
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