平成27年から文部科学省は「人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業(学校教育におけるICTを活用した実証事業)」として、少子高齢化が進む地域が抱える教育の問題をICT活用で解決するための実証事業に乗り出しています。
実証地域の1つとなった徳島県三好市では、下名小学校ほか2校で実証事業を実施。複数の少人数学級をWeb会議システムでつなぎ、多人数学級を形成して授業を進めています。そこで、Web会議システムのスピーカーフォンとして用いたのがYVC-1000とYVC-300。構想の背景には「少人数学級の児童に、より多くの児童と意見を交わす授業を経験させたい」という先生の願いがこめられています。
実証事業はまず2校で実施し、のちに3校へと拡張しました。Web会議システムを用いた授業では、テレビ画面・黒板・先生・発言者と目を向ける対象が多く、ときに、どの画面の誰が話しているのか児童が混乱してしまいます。そこで重要となるのが「会話の声」です。発言者の音声が聞き取りにくかったり、話している最中に音声が乱れたり途切れてしまうと、授業の進行を妨げてしまいます。
YVC-1000やYVC-300では教室内に響く足音や物音などのノイズを削減し、自分の声が返ってくるエコーを抑えることができます。音質だけではなく、機器の接続も重要です。先生のパソコンとYVC-1000をUSBで接続し、ハンドマイクをYVC-1000のオーディオ端子に繋ぐことで接続している全ての教室に声を配信できます。また、児童のiPadはYVC-300とBluetoothで接続します。YVCシリーズは機器の接続がシンプルで、柔軟に対応ができることも選定理由になりました。さらに、機器の選定にあたった三好市立下名小学校の中川斉史教頭先生は「音のプロフェッショナルであるヤマハの製品を選びました」と話しています。
ヤマハのYVCシリーズは収音した音量を最適化するオートゲインコントロール、発話者の自動追尾、残響抑圧など音声処理技術が多彩に実装されているため、教室内の音声を最適な形で接続先に送信できます。合同授業に参加する学級の中には広い教室もあります。YVC-1000は1つのマイクの収音範囲が半径3mあるため、マイクから少し離れた児童の声もクリアに拾います。
また、拡張マイク「YVC-MIC1000EX」を連結して用いることで、教室内をより広範囲にカバーすることができます(拡張マイクは最大で4台まで連結可能です)。スピーカーの音量の上げ下げやマイクのオン・オフはボタンでの操作なので、授業者も簡単に扱えます。マイクは「収音中」と「ミュート」でランプの色が変化するので、状態が分かりやすいのも特徴です。高品質な画質と音声で合同授業の円滑な実施が実現しました。
遠隔授業には高品質な音声が不可欠。YVC-1000とYVC-300で一体感ある学級を実現。
徳島県三好市立 下名小学校 教頭 中川斉史様
下名小学校の児童数は全校でも18名。2~3人のみの学年もあります。少人数の家庭的な雰囲気がある一方、多人数ならではの「多様な意見の交換」を体験する機会が少ないという難点もあります。今回文部科学省の実証事業を契機に、近隣の小学校をWeb会議システムでつなぎ、十数人の多人数で授業を実施することができました。Web会議システムを学校間の交流に役立てる事例は多くありますが、まだ合同で授業を実施する事例は多くありません。授業を実施するには高品質な画質と音声、高帯域の通信環境が必要になるからです。また教室内にはノイズがあり、児童の席は散在しています。グループ討論では同時並行で会話が進むなど、音声には高度な処理能力が必要です。YVC-1000とYVC-300、拡張マイクの組み合わせは音声に関する全ての課題を解決してくれました。
少人数化が進む児童たちにICT活用で多人数授業の経験を与えたい。
徳島県三好市 教育委員会 学校教育課 中川博史様
三好市は四国で最も面積が広い市です。公立学校の統廃合はすでに多数実施しており、これ以上の統廃合を行うと、児童を通学させることが現実的に厳しい状況です。少人数学級による手厚い教育の良さはありつつも、多人数学級を経験させる意義はあると思います。合同授業後のアンケートでは、少人数学級の生徒ほど他校との交流経験を良く評価しています。合同授業は「複式」(複数の学年の授業を同一教室で並行して実施)授業の先生の負担を減らしたり、多人数学級を経験することで中学進学時の環境変化を減らす効果もあると期待しています。
(2016年8月25日 掲載)
ご相談・お問い合わせ