文部科学省の「人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業」では、多様な意見に触れる機会が少ない、コミュニケーション力や社会性を養う機会が少ない、といった小規模校の教育上の課題を解決するために、12の地域で学校同士をICTでつなぎ協働学習などを継続的に実施。指導方法やカリキュラムの開発および学習効果の検証が行われました。実証地域の1つに選定された長野県喬木村では、教育委員会が配置したICT支援員(のちに教育CIO(最高情報責任者)補佐官1名+ICT支援員2名に体制拡充)が中心となって、村内の2つの小学校(喬木村立喬木第一小学校と喬木村立喬木第二小学校)をつないだ遠隔合同授業の実証研究が3年間にわたり行われました。
両小学校のアクティブ・ラーニング教室には、お互いの教室の様子を高解像度で映し出すネットワークカメラ&大型ディスプレイのほか、クラウド型のWeb会議サービスを利用するためのPCや大型ディスプレイ・電子黒板・児童ひとり1台のタブレット端末などからなる、遠隔合同授業のためのICT環境が用意されました。機器やサービスは、地元信州大学教育学部附属次世代型学び研究開発センターなどの協力を得て選定されました。
遠隔合同授業においては、大型ディスプレイによる多様な情報表示に加え、離れた教室の児童同士が違和感なくコミュニケーションできるクリアな音声が重要で、Web会議サービスにマイクスピーカーを組み合わせることで、広い教室にあわせて音声を最適化する必要があります。こうした要件を満たすマイクスピーカーとして採用されたのがYVC-1000でした。
デジタル教材を表示する教室前方中央の「電子黒板」下にYVC-1000のスピーカーを配置。マイクについては、一クラスの児童数6~11名の喬木第二小学校は標準セットの1台で、一クラス児童数24〜30名の喬木第一小学校は拡張マイクを4台追加した全5台で、児童全員の発声をバラつきなく収音し、相手校の教室全体にクリアで十分な音量の音声を届けました。
遠隔合同授業では、プレゼンターの児童が前に出て発表をしたり、途中で机のレイアウトを変えてグループワークをしたりと非常にアクティブな動きを伴います。児童たちの机の間にマイクを配置すると、マイクや接続ケーブルがそれを妨げたり、マイクの近くの児童が発するノイズを収音してしまう可能性がありました。拡張マイクを4台増設した喬木第一小学校では、ICT支援員の発案でマイクを天井に設置し、これらの課題を回避。児童や先生の動きを妨げることなく、ノイズを低減したクリアな音声を実現しました。
クリアで安定した音声は遠隔合同授業の要。もっと色々な学校とコミュニケーションしてみたい。
遠隔合同授業では、大型ディスプレイの映像やマイクスピーカーの音声を通じて、離れた教室の児童同士が意見を述べ合ったり、教室をまたいだグループで協働作業を行ったりします。ネットワークカメラが映し出す映像が帯域の関係で乱れることが何度かありましたが、YVC-1000による音声はネットワークが別ということもあり、常にクリアで途切れることなく、滞りなく授業を続けることができました。音声が途切れるなど聴き取りにくくなってしまうと、遠隔合同授業の進行は困難です。改めて音声の重要性を認識しました。
マイクの天井設置については、メーカーの推奨(動作保証)こそ得られませんでしたが、思い切ってトライしてみたところ、特に問題なく期待した通りの効果を得ることができました。今後はこのシステムを活用して、国内他県や海外の学校ともコミュニケーションを深める授業をやってみたいですね。
(2018年08月06日 掲載)
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