ワークライフバランスの重視やダイバーシティ施策の浸透により、ワークスタイルが変化しつつある現在、企業においても働き方改革が求められている。とはいえ、どう変えればいいのか、何から始めればいいのかについてイメージがわかない企業も多いだろう。そもそも働き方改革とはどういうものなのか、具体的にどう変えていけばいいのかを、ワークスタイル変革を主導する日本マイクロソフトの業務執行役員・エバンジェリストの西脇資哲氏に伺った。
日本マイクロソフト 業務執行役員・エバンジェリスト 西脇資哲氏
―― まずは西脇さんが担当されている業務について教えてください。
西脇氏:マイクロソフトの全製品・サービスに加えて、人工知能(AI)や自動運転といったITが世の中にどういう変化を巻き起こしていくかを伝えるエバンジェリストの仕事をしています。
―― ご自身が率先して新しい働き方を実践されていると伺いました。そもそも働き方改革とはどういうものだとお考えでしょうか。
西脇氏:私は年に250回程度の講演活動を行うなど、働く場所自体が全国各地に広がっているのですが、それ以外にも個人的にテレワークを実践しています。先日は函館に行ってテレワークをしていました。函館で何か業務があったわけではなく、ただ働く場所を変えてみたということです。
いま働き方改革の重要性が言われる背景としては、時間を効率的に使って生産性を上げる、従業員の働く意欲や満足度を高めるために労働時間を減らすといったことが語られます。私としては、「会社ありき」ではなく、まず「自分ありき」で豊かな生活を実現する、生活が豊かだからいい仕事もできる…… そういう社会にしたいという思いがあります。
―― 企業が働き方を改革するには具体的にどのような施策が必要でしょうか。
西脇氏:従来の働き方は、「決められた時間(Fixed Time)、決められた場所(Fixed Place)、決められたデバイス(Fixed Device)」という“3F”が一般的でした。私はこれを「いつでも(Anytime)、どこでも(Anywhere)、どんなデバイスでも(Any Device)」の“3A”に変えることが重要だと考えます。3Aを実現するには会社のカルチャー、風土を変えていくことが大前提ですが、そのためにはトップダウンで変革する決意が必要です。
たとえば会議。いまは離れた場所にいても会議に参加できるチャットツールやクラウドサービスが数多くあります。ITを活用すれば、会社にいないメンバーも場所に縛られず参加できるようになります。まずはそういったところからITを上手に使い、会社のカルチャーを変えていくことでしょうね。
―― 日本の企業では、会議や日々の業務にチャットツールを導入することに対してネガティブな意見がまだまだ多いように思います。
西脇氏:あれはできない、これはダメだとネガティブから入ると、無条件で阻害要因になってしまいます。考えてほしいのは、いまは若い人に限らず、世代が上の方でも、会社を離れれば当たり前のようにチャットツールを利用しています。となれば、むしろ仕事にチャットツールを取り入れないほうが不自然ではないでしょうか。
業務にチャットツールが入ると「従業員同士がプライベートの会話をするから困る」という意見もありますが、「今晩、飲みに行こうか」などといった相談はチャットツールがなくてもみんな普通にしていますよね。普段直接話している内容が、チャットで行われるだけなので、それほど大きな問題ではないはずです。
社外ではチャットツールだらけなのに、社内だけ否定するのはおかしい。だからこそカルチャーを変えることが重要なのです。
―― チャットツールの代表サービスとして「Skype」があります。御社では企業向けの「Skype for Business」をリリースされていますが、本サービスの強みを教えてください。
西脇氏:いまや大企業だけでなく、スタートアップ企業でも当たり前のように導入いただいていますし、国際会議などでも使われています。日本企業にも浸透していて、上場企業の6割以上で導入していただいている状況です。企業にお使いいただくうえで、チャットツールしながらOfficeなど他の作業も行えるようにしたり、相手の音声をクリアにする機能を搭載したり、セキュリティも漏れなく充実させているのですが、やはり世界中でお使いいただいているブランド力が大きな強みだと考えています。
―― 働き方改革を実現するうえで「Skype for Business」はどのように役立つとお考えでしょうか。
西脇氏:コミュニケーション速度のアップと生産性向上が「Skype for Business」導入の最大のメリットです。従来の働き方ではメールが大きな役割を果たしていましたが、メールでは文面を書き、送り、相手が見て、返信を書き、送って、こちらで受け取り、見るという一連のフローが発生します。サイクルが長いのでまったく非効率ですし、意思疎通の不具合も生まれがちです。チャットツールならそれが瞬間的に、しかも顔を見ながら行えるわけです。時短と生産性向上により働きやすさと満足度が上がることで、結果的に楽しい人生を送れるようになります。
Skypeは、相手がどこにいてもコミュニケーションができます。もはや相手がいる場所を気にしない、つまりAnywhereが前提となっています。話し相手は自宅や公園のベンチで働いているかもしれないし、地方の拠点や海外事務所、あるいは私のように函館のカフェにいるかもしれませんが、本来仕事をするうえで、どこにいるかは関係ありません。現実には会社の就業規則を変えるなど制度面の整備も必要でしょうが、それこそカルチャーを変えるということで、トップダウンで進めるべき点だと思います。
―― 10月10日に発売されたヤマハのユニファイドコミュニケーションマイクスピーカーシステム「YVC-1000MS」は、「Skype for Business」向けのマイクロソフト認定モデルです。実際にお使いになったうえでの感想をお聞かせください。
西脇氏:本製品は、さすがにヤマハさんの製品だけあって、マイクやスピーカーの性能、音質、いずれも素晴らしいですね。オンライン会議に必須のエコーキャンセラーやノイズリダクション機能も搭載されていますし、マイクをリレー接続で増やせるなど拡張性が高いのも利点です。10m×10m程度の大きな部屋でも使えるということで、会議はもちろんセミナーや教育現場でも活用できるのではないでしょうか。
「YVC-1000MS」を使ってテレビ会議を実施
―― 「Skype for Business」を活用するうえで、「YVC-1000MS」にはどのようなメリットがあるとお考えですか。
西脇氏:働き方改革を実現する空間づくりの点で、大きな役割を果たすと考えています。今後の会議のあり方として、会社を離れた自宅などでのテレワークはもちろんですが、それ以外の第3の拠点、たとえばサテライトオフィスやシェアリングスペースとの間で会議を行うケースも増えていくでしょう。
「YVC-1000MS」のようなマイク・スピーカーシステムがその空間に入っていれば、Skypeのポテンシャルをより有効的に活用でき、会議の質も向上していきます。3Aをベースとした働き方改革を進めていくためにも、「YVC-1000MS」のようなシステムがさらに進化していくことを期待しています。
(2018年06月21日 掲載)
ご相談・お問い合わせ